浮気者上司!?に溺愛されてます
そうこうしているうちに、紫乃さんは無事に仕事復帰を果たした。
今まで仕事中はいくらか警戒を解いていられたけど、こうなってしまっては、恭介がオフィスフロアにいる時くらいしか安心できない。


かと言って、デスクにしがみついていてもらうわけにもいかないし、かかってくる電話やメールをシャットアウトすることも出来ない。
とにかく恭介自身に意識的に気をつけてもらうしか手はないのに、恭介はやっぱり、相変わらず呑気だ。


『俺もそうだけど、奏美は自分の心配しろ。お前を油断させておいて、意外と夜道で襲われるかもしれないんだから』


実際ストーカー行為の前科があるしな、と言われてはさすがに笑えない。
オフィスでも通勤の行き帰りでも、常に近づく気配に意識を研ぎ澄ませて、注意は怠らなかったつもりだ。


だけど一週間が過ぎても、紫乃さんからの接触はおろか、その姿を見かけることもなく、私は、恭介を家に帰さずにいる自分の行動に、疑問を抱き始めていた。


どっちにしても、このままでいいとは思えない。
恭介を心配するあまり、こんな形で恭介を拉致して、想像以上に甘い幸せに酔ってしまったけれど。
恭介と紫乃さんが話し合う場を奪ってしまうのは、正しい行為じゃない。
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