浮気者上司!?に溺愛されてます
恭介にとっても紫乃さんにとっても必要なことで、そして、それは私にとっても大事なことだ。


私に向けた脅しを紫乃さんが本当に恭介にするわけがない、と思った。


激情に揺さぶられた紫乃さんの恭介への『報復』を私は恐れてしまったけれど、紫乃さんが恭介を本当に愛してるのなら、そんな酷いこと、本当は出来ないんじゃないだろうか。
彼女がしたいことは、恭介とちゃんと向き合うこと。
そうやって、恭介の心に触れたいんじゃないか。


私だったら、そう思う。
たとえば私が紫乃さんの立場で、大事にされていても愛されないまま結婚したとして……。
そしてもし、彼が他の女性を本気で好きになってしまったら。
彼の心を取り戻せないと判断したら……。


せめて、自分が彼のそばにいた瞬間、彼の心に私が息づいていたか、それを確認したいと思う。


それなら私がしていることは、その機会を奪うだけ。
何も進展せず、引き返すことも出来ないこの状況で、ただ立ち尽くしているだけ。


そんな葛藤を心に抱き始めた頃、業務中に紫乃さんからメールを受け取った。


『恭介と、話がしたいの』


差出人の名前を見た途端、条件反射で身体が強張った。
それでも、その内容は恭介の奥さんとして当たり前の要求で、もちろん私が拒めるものではなかった。
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