浮気者上司!?に溺愛されてます
「あ、あっ! 課長、おおお……沖縄料理とか嫌いですか!?」


目についてビシッと指差したのは、高津とよく来たことのあるお店だ。
物に寄ってはチャレンジすぎるメニューもあるけど、私はここのチャンプルーがお気に入りだ。


「割といける」


そう返事はしてくれても、課長は私のセレクトよりも、どこまでも怪しい態度の方が興味あるらしい。


「じゃ、ここで」


そう言って先に歩き出す私の肘を後ろからグッと掴むと、ちょっと待った、と声をかけてきた。


「はっ! やっぱり違うとこがいいですか!? だったら鹿児島料理で黒豚とか……」

「郷土セレクションはどうでもいいから。そうじゃなくて。やっぱ、その呼び方問題だよな……」

「……はい?」


キョトンと首を傾げた私を、ふむ、と呟きながら口元に手をやってしげしげと眺めた後、桜庭課長はニコッと私に笑って見せた。


「お前、下の名前なんつったっけ?」


そして、ランチのお店には全く関係ない質問をぶつけてくる。


「は? ……あの、奏美、ですけど」

「そうそう。それだ。奏美ね。可愛い名前じゃん」


そんなことをサラッと言われて、私の鼓動は飛び上がる。
なのに課長はどこか満足げだ。
それが今何の意味があるのか?と目を瞬かせた私に。


「奏美」


今度はちゃんと呼びかけながら、その唇を動かした。


「っ……」


不意打ちを食らって、私はどう反応していいかわからない。
そんな私に、桜庭課長は当たり前のように告げた。


「これからはそう呼ぶから、お前も俺を名前で呼べ」


しかも、完全命令口調で。
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