浮気者上司!?に溺愛されてます
『恋人っぽくない』って。
まさにそれを撤回する為に時間をとってもらっただけなのに、名前呼ばれただけでキュンキュンしてるなんてありえないでしょ!!


「課長っ! だから、私の話を聞いてください!!」


その背中に必死になって声をかけると、溜め息交じりの視線が返ってきた。


「……『恭介』」


二度言わせるな、と、無言の圧力を感じる。
背筋に変な汗が流れる気がして、私はあっさりと白旗を上げた。


「……きょ、きょう……すけ……」


心の中で『さん』と続ける。
それでも完全に語尾は消え入っていて、桜庭課長はまだ不満そうな表情で私を大きくねめつけた。
そして、わずかに肩を竦める。


「……ま、仕方ないか。お前、免疫ないしな」


その一言が余計。
むううっと頬を膨らませた私に、桜庭課長は軽く振り返って口元をわずかに緩めて笑った。


「……奏美、早く来い」


だっ、だからっ……!
その妙に雰囲気のある微笑みで名前を呼ぶなんて、反則なのっ!!


それでも、私は二十七歳の一般的なOLに比べればだいぶだいぶ心身ともにピュアなはず。
その反則行為に、手を挙げて抗議なんかできるわけがない。


「……はい」


がっくりと頭を下げて、ただ言われるがまま、その背にスゴスゴとついていくだけだった。
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