浮気者上司!?に溺愛されてます
「こ、こんな真昼間、オフィス街のランチタイムに、『あ~ん』ってっ……!」

「恋人っぽいだろ。俺も普段はこんなのごめんだけど、奏美、初心者だし。あえてやってやった」


してやったり、とでも言いたげな、満足そうな表情を浮かべる恭介に、ドッと力が抜けていくのを感じた。


ああ……。
オフィス街でこんな目立つことしてしまったせいか、さっきまでは巻き添えでしかなかった私にも、完全に好奇の目が向けられてしまっている。


も、もうダメだ。早く、早く言わないと。
このランチ休憩の一時間だけで、私は心身ともに疲労困憊してしまう。
午後の仕事が手につかなくなってしまう。


「あ、あのっ、恭介っ」

「ん?」

「金曜日の夜の話なんですけどっ」


まだ顔は真っ赤だし、心臓はドッドッと打ち鳴っている。
それでも私はさっき以上に背筋を伸ばして、肩を怒らせながらようやくそう切り出した。


「何?」


恭介の方は、もう何事もなかったかのようにさっさと食事を進めている。
どこまでも余裕な態度を悔しく思いながら、私は必死に言葉を続けた。


「な、なかったことにしてください」

「どれを?」


やっとの思いで口にしたのに、恭介からは短い即答が戻ってくる。
間合いもないままで、私はすぐに返事をすることも出来ない。
口ごもる私をチラッと見やって、恭介は静かに箸を置くと、左手で軽く頬杖をついた。
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