浮気者上司!?に溺愛されてます
「うちが勝ち取る勝算は?」

「うちを含めた大手三社の巴戦になるかと。ですが、これまでの実績を勘案しても、五分以上は……」

「五分? それじゃダメだよ。ビジネスに半分の確率で臨もうとするな。うちの研究所だけじゃなく、外部の専門家とも連携して、やるからには百を狙った企画にしてもらわないと」


高津の返事を聞いて溜め息をついた恭介が、頬杖をついて素っ気なくそう言った。
そんな恭介の言葉に、羽村さんはもちろん、他の総合職もそして私たちも一瞬目を丸くした。


「……当てがないなら、紹介するけど?」

「い、いえっ……、大丈夫です。すぐ手配します」


高津の方も、恭介の突っ込みになんの準備もしていなかったのか、慌てたようにそう取り繕った。
そんな高津に、恭介はチラッと冷めた視線を向ける。


「……甘いんじゃないの? 高津ももう五年目だろ? そろそろ誇れる実績上げておかないと、後は食われるだけだと思うけど」

「っ……、すみませんっ」


いつになく鋭く辛辣な恭介に、課員全員が驚いていた。
私の隣ではももちゃんが泣きそうになっているし、羽村さんも含めた総合職社員は、自分の報告を慌てて見直し始めていた。


「まあ、頑張って。来週の報告でこの後の進捗、ちゃんと上げるように」


バサッと音を立ててレジュメを閉じて、短い返事をした高津を見やってから、恭介は短く「次」と促した。
高津は黙って頭を下げる。
そして、いつになく緊張した空気が漂う中、次の先輩がどこかたどたどしく報告を開始した。
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