浮気者上司!?に溺愛されてます
「奏美がほんのちょっと前まで好きだった相手だって思ったら、ムカついたんだよね」

「……桜庭課長、今は仕事中で、オフィスなんです。ちゃんと名字で呼んでください」

「嫉妬って、抑えらんないよなあ……。会議中、奏美、高津のことばっか気にしてたし」

「そんなことっ……！」


恭介のふて腐れたような声を聞いて、私はそう否定しながら振り返った。
そして、グッと息をのむ。
ほんとの本当に、恭介は私のすぐ後ろに立っていたから。


「あ～、部下を叱るってほんと疲れる。神経すり減るし」


そう言って大きく溜め息をつく恭介の気持ちは私にも少しはわかる。
恭介ほどではなくても、私だって後輩に注意した後は、少なからず重い気分になる。


仕事だから。
指導のつもりでしたことでも、それが相手に伝わっていなかったら、相手に嫌な思いをさせることになるのだから。
それがいつかわかってもらえると思っても……その時、心に抱くのは、重苦しくて苦い気持ちでしかなかったり……。


「高津なら大丈夫ですよ。そんな小さい男じゃないから」


そう言って笑ってみせると、恭介は少し微妙な顔をしてそっぽを向いた。


「……いつまでも、高津を褒めるなよ」

「え？」

「お前は、俺の女だろ」


そんな、独占欲丸出しの言葉を放って、恭介は小さな溜め息をついた。
私は、言われ慣れない言葉にただ驚いて、恭介を見つめながら目を瞬かせた。
そして、次の瞬間、カアッと頬が熱くなるのを感じる。


「あ、あの……でも……」


必死に言葉を繋ごうとしながらも、その後何を言っていいのかわからない。
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