浮気者上司!?に溺愛されてます
上司の顔して奪還宣言
『彼ったら、私が仕事で忙しいからって、会社の後輩に手を出して浮気してたのよっ……!』


途中から涙交じりになって、最後には泣き声も憚らずそう叫んで突っ伏したのは、私の斜め前の位置にいる隣のテーブルのOLグループの一人だった。


いくら酔客が集ってそこそこ騒がしい居酒屋と言っても、隣で叫ばれれば会話は丸聞こえだ。
しかも、そのOLの言葉に『浮気』やら『会社の後輩』やら……聞き流せないワードが多すぎて、私はなるべく目線を逸らしながらも、耳は完全にダンボになっていたのだ。


わあああっ、と声を上げて泣き出す『浮気男の彼女』さんを、仲間たちが慰めているのが聞こえる。


『ホント、コウジ君って、サイッテーだね! 浮気なんか許しちゃダメだよ』

『酷すぎ! しかも、バレなきゃいいって考えが見え見えなのが腹立つしっ』

『一度浮気した男は、今後も繰り返すって言うしね~。結婚する前にわかって良かったじゃない。キッパリ別れるべきだよっ』


人一人が優に通れる通路を隔てた隣席の会話なのに、なんだか色々と痛い気持ちになって、私の方が肩身が狭くなってしまう。


そうだよね。それが普通の感覚だよね……。
ちゃんと彼女がいるくせに、一時の気の迷いとか、魔がさしたとか。
そんな理由で浮気されたらたまったもんじゃないよね。


そんな男、許すべきじゃない。
うん、他人事だけど、それは確かに私もそう思う!


ところが、今の私は正義感奮って力説出来ないのがとても辛いところだ。
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