浮気者上司!?に溺愛されてます
そりゃそうだ。
まだ二十七歳なのに、墓場まで持っていくほど胸の奥底にしまわなければいけない話なんて。
軽く声を低めて身を乗り出しながらも、心は若干及び腰だった。


「内緒にしてね。……私、本当は知ってるんだあ。私のお腹に風花がいた時、茂が浮気してたこと」


口に含んだカクテルを吹き出しそうになった。
なんとかゴクンと飲み下して、私はゴホゴホと噎せ返った。
そして、大きく息をしてから、真っすぐ真由美を見つめた。


「じょ、冗談でしょ……?」


そう言って、顔を引き攣らせてみたけれど、真由美はすごく真剣な表情のままだから、信じないわけにもいかない。


ああ、こんなすぐ近くにも、『被害者側』の女がいたなんて!
妙な焦りに、冷や汗が噴き出すのを感じた。


「まあ、ほら。……妊娠中って私の方もイライラしてたし、茂の方も……いろいろと欲求不満だったろうしね」


真由美はそう濁したけど、いくら私でも、なんとなく夫婦間のそっちの問題が関係してることくらい理解できる。


「で、でも。真由美、それで許したの? ……だって茂君……」


意外とさっぱりとしている真由美がよくわからなくて、私は遠慮がちにそう訊ねた。


「そりゃ、茂がいないとこでお皿割って暴れて、大泣きした」

「うっ……」


きっとかなり壮絶だったろうことは、想像できた。
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