浮気者上司!?に溺愛されてます
なのに。


「……そうして、胸にしまい込んだ」


抑揚のない声で言うからサラッと聞き流しそうになってしまうけど、その時、真由美がどんなに辛く悲しい想いをしたか。
それが手に取るようにわかるから、私は一瞬唇を噛んだ後、でも、と反論した。


「なんでそんな穏やかに許すことが出来るの!?」

「だって、それでも私、茂が好きだし。結局茂も私を愛してくれてるの、わかってるのよね。今幸せなことに変わりはないから」


静かにそう言い切った真由美に、私はグッと息をのんで黙り込んだ。


「あの時気づかないふりをした自分が正しかったって思うわ。……そりゃ、ちょっとした喧嘩をした時とか、思い出しはするんだけどね」


同い年なのに、誰かに愛されて結婚して、母になった真由美がとてもとても大人に見えた。
きっと私だったらそんな風に心を殺すことは出来ないと思う。
それとも、愛されてるという自信があれば、広く寛大な心で相手の過ちを受け入れることも出来るんだろうか?


「……真由美、強いね……」


俯いて唇だけ動かして呟いた声は、真由美には届かなかったみたいだ。


まだ誰からも愛されたことのない私は、真由美のように強くはなれない。
真由美がとてもとても羨ましくて、そしてほんの少し、妬ましい気持ちだった。
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