浮気者上司!?に溺愛されてます
恭介が私をどう思おうが、そんなの私に関係ない。
そう、決して本物の恋にならない疑似恋愛なんか真剣に付き合ってる場合じゃない。
私は、普通でいいからちゃんと本気の恋がしたいの!
いくら……心の奥底で恭介の言葉を嬉しいと思っていても、それ以上にはならないんだから。


そう言い聞かせながら、私はラウンジ出てオフィスに戻る。
頭の中で、今夜急遽誘われた合コンに意識を巡らせた。


別部署にいる同期から、数合わせのお誘いだった。
相手はうちの会社の経営戦略部の面々だ。
あまりやり取りのある部署じゃないから、初めましての人ばかりだろうし、今度こそ真剣な出会いもあるかも!と気合を入れようと拳を握った。


「あ、水野さん」


デスクに戻ると、隣の席の後輩が途中まで書いたメモを丸めながら声をかけてきた。


「つい今、桜庭課長から電話があって。小会議室に持ってきてほしいファイルがいくつかあるそうです」

「えっ」


ただの仕事の命令なのに、思わずドキッとしてしまう。
後輩が口にした資料の名前を頭に刻み込みながら、一瞬、どうしよう、と躊躇した。


頼まれたファイルは、別に私じゃない他の誰かに頼んでもいいものだ。
席を外していた私にわざわざ伝言してまで依頼しなくても、それこそ電話を代理応答してくれた後輩に持って来させてもいいはずなのに……。


そして、それは電話を取ってくれた後輩も同じように思ったのだろう。


「あの……。なんなら私が行ってきましょうか?」


そう言ってくれる後輩に、お願い、と頷きかけて。


「……ううん。行ってくるからいいや」


そう言ってしまったのは、どうしてだろう。


そんな疑問を自分にぶつけておいて、それを完全に無視しながら、私は頼まれたファイルを取りに書庫に向かった。
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