浮気者上司!?に溺愛されてます
「……どうしてっ!?」


無性に腹が立って仕方ない。
ピッと伸ばした人差し指でエレベーターの▽ボタンを勢いよく押して、私はそんな言葉を吐き出していた。


ドア脇の鏡に全身を映して、私は自分の姿を舐めるように見つめた。


ぼんやりと頬を赤く染めたほろ酔いのOLがそこにいる。
それなりに流行を意識したオフィスカジュアルの服。
茶色く染めたストレートの髪は背中半分まであって、毛先だけふんわり巻いている。
ナチュラルメイクだけどオフィスではこのくらいが嫌味なくちょうどいい。
二重の目はクリッとしていてリスみたいと言われることもある。
ちょっと団子っ鼻がウィークポイントだけど、顔のバランス的にはそれほど酷くはない。


取り立てて美人でもないし、尾ひれがつくほど可愛いわけでもない。
でも悪くない。世間一般的には標準レベル、と自分では思っている。
性格だって友達が多くて『いいヤツ』って言われるくらいだから、決して決して残念な難あり物件ではないはずなのにっ……!!


「どうして私を誰も選んでくれないの!?」


思いっきり叫んだら、少しだけ気分がスカッとした。


『いいヤツだな』


そんな言葉が欲しいんじゃない。
その言葉を言われた瞬間、私は『対象外』にされてしまうんだから。


それならば、もう『いいヤツ』だなんて言わせない。
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