浮気者上司!?に溺愛されてます
「奏美、こっち来いよ」


そう言われて、今度は私の方が一度大きく溜め息をついて、クルッと恭介に向き直る。
テーブルに軽く腰掛けて、膝の間で缶コーヒーを揺らす恭介がジッと私を見つめていた。


「……頼まれた資料は持ってきました。私の役目はこれで終わったと思うんですけど」


そう言って目を逸らすと、恭介は一瞬黙ってから喉を仰け反らせて缶コーヒーを煽った。
そして、自分の左側にコトッと空き缶を置く。


「そんなに嫌な顔するくらいなら、他のヤツに押し付ければ良かったのに」


恭介にも指摘されて、私はグッと黙り込む。
そして、そうしなかったのは他ならぬ私なのだ。


「……だって、業務命令だったから」


説得力のない言い訳だけど、私の行動を説明できるのはその言葉しかない。
私の返事を聞いて、恭介はわずかに俯いた後、クスッと笑った。


「業務命令なら聞くんだ」

「それは、まあ……」

「じゃあ、これも業務命令。奏美、こっちに来て」


反応を試すように上目遣いで私を見つめる恭介に、ドクンと心臓が大きな音を立てた。


「な、何の為に……」


軽く動揺しながら呟くと、恭介は両腕を天井に突き上げて身体を解しながら、ん~と首を傾げた。


「息抜きに付き合ってほしいかな」

「はい?」

「雑談するくらい、いいだろ。いいから、早く」
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