浮気者上司!?に溺愛されてます
「か、課長っ」

「名前で呼べ。こんなとこ、誰も来ないから」

「何言ってっ……! オフィスなのに、何考えてるんですかっ!」


腰に回っていた右腕が、ツーッと背中に移動してくるのがわかる。
ゾクッと身体を強張らせながら、私も恭介の肩に置いた腕に必死に力をこめたけど。


「……恭介、離して」


抗う限界を感じて、私は観念したようにそう呟いた。


「やだね」


それなのに、恭介はそんな一言を返してくる。


「……雑談だって、言った」


力ない抗議を消え入らせて口ごもる私を、恭介は妙に妖艶に細めた目で見上げて……。


「疲れた。癒してよ、奏美」

「えっ……」


逸らしたいのに、恭介の瞳に囚われたまま、私は自分の心臓が怖いくらい打ち鳴っているのを感じていた。


「……そんなに命令させたいなら、上司権限発動するけど」

「そっ……」

「ちょっとだけでいい。十秒だけ、肩貸して」

「っ……!」


途端に身体が硬直したように動かなくなった。
私の肩に額をのせて、恭介は意地悪にクッと笑う。


「奏美、すっげードキドキいってるの、聞こえてくる」

「こ、こんなことされたら、誰だって……っ」

「可愛い。徹底的に苛めてみたくなるな」


まるで、摺り寄るように私の肩口で顔を動かして、恭介が私の耳元でゆっくりと低めた声を放った。
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