浮気者上司!?に溺愛されてます
一次会で消えて行った二人以外は、それほどフィーリングの合う人を見つけられなかったのだろう。
カラオケボックスから出て、私たちは普通に「ありがとうございました」と手を振ってお別れした。


もしかしたら、水面下で連絡先をやり取りしていた人もいるのかもしれない。
あまりピンと来なくても、次を期待する為に今はキープしておくって打算だって、この年になればあるはずだ。


それでも私は、誰のアドレスもゲットすることもなく、もちろん特別聞かれることもなく、みんなに手を振って地下鉄の駅に向かって歩き出した。


『なんでお前が行く意味があるんだ』


夕方の恭介の言葉が胸を過った。
ほんと、なんの意味があったかなあ、と自分でも思う。


合コンに来て付き合える相手を見つけるのが目的だったはず。
でも、結局いつもと同じ無意味な時間を過ごしただけ。
それでもさほどガッカリしていない自分を自覚する。


「……『合コンに行く』って言いたかっただけなんだろうなあ……」


無意識に漏れたそんな言葉。


恭介に……私はちゃんと普通の恋をしたいんだ、と、態度で示したかっただけだ。
それがちゃんとわかってしまう。


今日出会った男性たちに、決して悪い印象なんて持っていない。
むしろ、普通の恋をするなら十分過ぎるほどの人に出会えたって思う。
なのに、その先を求めずに手を振ってしまうあたり、私自身はその誰とも恋を望んでいなかったってことだ。
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