浮気者上司!?に溺愛されてます

驚いて振り返るより先に、


「悪いな、堀川」


そんな冷たい声が頭上から降ってくる。
私の真正面に立っていた堀川さんは、私の背後をギョッとした表情で見つめている。


「えっ……あ、桜庭っ……！？」


堀川さんの声と同時に、私も自分の視覚で恭介を確認していた。


「俺んとこの可愛い部下だ。お前の汚い手で触らせるわけにはいかないんだよ」


恭介は私の肘を掴んだまま、そんな言葉を堀川さんに浴びせていた。
それを聞いて、堀川さんが怯む。


「ヤりたいだけなら、他当たれ。コイツはそんな女じゃない」


地の底を這うような低い低い声でそう言って、恭介は私の肘をグッと引き寄せた。
そして、あ然としている堀川さんに背を向けて、わずかな抵抗を示す私を引っ張って、夜のオフィス街を歩き出した。