浮気者上司!?に溺愛されてます
週末ではない夜のオフィス街でも人通りはある。
コンパスの差を気にせずグイグイ歩く恭介に引っ張られるだけで、ほとんど小走りの私を、通り過ぎる人たちが面白そうに振り返っていく。


「きょ、恭介っ……」


息を切らしながら、なんとか声を上げた。
なのに恭介は相変わらず私には目もくれずに、ただ闇雲に先に突き進んでいく。


「恭介っ……、お願い、もっとゆっくりっ……」


さすがに息が切れて、心臓が口から飛び出そうだった。
私の、息も切れ切れの声に、ようやく恭介が私の手を離してくれる。
その途端、私は糸が切れたようにペタンと地面に座り込んだ。


そんな私を見下して、恭介は静かに立っている。
いつの間にかオフィス街を抜けて、通りの人通りはまだらだった。
だから私もただぼんやりと恭介を見上げる。
その背にまん丸の月光を浴びた恭介は、妙に神秘的で美しかった。


「あ、あの……」


その姿に思わず見惚れながら、ぼんやりと声をかけた瞬間。


「このバカッ!!」


神のように美しい顔を烈火のごとく怒らせて、恭介が私に怒鳴りつけた。
途端にビクッと身体を震わせてしまう。


「お前、ほんっっっと……! 男見る目なさすぎる。いいか、ついさっき堀川に着いていこうとした理由を、十文字以内で答えろ」

「……は?」

「俺の誘いを断って出向いた合コンで、よりによって堀川に着いていこうとした理由を聞いてるんだ」
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