浮気者上司!?に溺愛されてます
そして、自分を落ち着かせるように一瞬間を取った後、私に大きく一歩足を踏み出して……。


「……っ……!!」


私は、大きく息をのんだ。
私の身体に回された恭介の長い腕。
私の頬は逞しい胸に押し付けらていて、そこから、恭介の鼓動すら聞こえてくる。
抱きしめられている、と感じた瞬間、私の鼓動が大きく飛び跳ねた。


「俺だって、らしくないって思ってるよ。けど、放っておけないんだから、仕方ないだろ」


ふて腐れたような、いつもよりずっと素っ気ない声が頭上から降ってくる。


「……俺じゃない他の男を選ぶにしても、危なっかしくて見てらんないんだよ」


聞き慣れないぶっきら棒な口調がとても新しくて、胸がキュンと疼いてしまう。


「……なあ、奏美」


更に腕の力が強まって、恭介が私の耳元で囁いた。
耳をくすぐる声に、ビクッと身体が強張ってしまう。


「……なんで俺じゃダメなんだよ……?」


切なげな声に、一瞬意識が引きずり込まれるかと思った。


どうして恭介じゃダメなのか……?
そんなの、恭介が一番よくわかってるじゃない。
こんなに強い想いをぶつけられて、戸惑うのは私の方だ。
こんなに揺れ動くのをセーブするのに必死で苦しいのは私の方だ。


「……痛い初恋なんか、したくないもの」


恭介の胸の中で、それだけを必死に言葉にした。
聞こえるかどうかわからないくらい小さな声だったのに、一瞬ピクッと、私を抱く恭介の腕が震えたような気がした。
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