浮気者上司!?に溺愛されてます
「おおい! 水野、お待たせ! 行こうぜ」


いつの間にかデスクから離れて私の方を見やりながら、高津がそう声をかけてきた。
それを聞いて、私はここぞとばかり強く手を引っ込めて、恭介の手から逃げた。


「い、今行く!」


なんとか元気に返事をしたけど、顔は真っ赤になってるのはわかるし、微妙に声もひっくり返ってしまった。
少し離れた位置に立っている高津が、不思議そうに首を傾げる。


「なんだ? お前。熱でもあるの?」

「なんでもないからっ」


そう言って誤魔化すと、小走りで近寄った。
そして、待ってくれた高津の隣に並んで歩く。


ドアから出る前に、ほんのちょっとだけ恭介を振り返って……。
ドクンと大きく鼓動が鳴ってしまうのを抑えられなかった。


まだデスクに左手を置いたまま、恭介が肩越しの視線を私に向けていた。
ほんの一瞬ぶつかった視線から逃げるように顔を背けて、私は高津の背を押すようにオフィスを後にした。
< 65 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop