浮気者上司!?に溺愛されてます
「……なんか気になるなあ。なあ、本当はなんかあったんじゃないのか?」


こういう時、高津は意外としつこい。


「今までの水野になかったことって……」

「ほんと、何もないって」


どこか探るように身を乗り出してくる高津をピシャッと遮った時、オーダーした料理が運ばれてきた。


「ほら、食べよ」


そう言いながらテーブルの端っこに置かれた割り箸入れに手を伸ばすと、タイミングがかぶってしまったのか、高津が私の手に触れた。


「あ、悪い」

「うん」


短く謝って手を引っ込める高津に、私は高津の分も手に取って差し出してあげた。
そして高津も特に気にした様子もなく、サンキュ、と私から箸を受け取る。


そうして割り箸を割りながら……私はなんとなく自分の右手を見つめた。


ほんの少し前までは、高津とこうやって手が触れ合ったりするのも実は緊張していた。
もちろん、それを気取られないようにしていたけれど、今はもう本当にときめかない。
そりゃ、高津はももちゃんの物だし、私は気づかれることもなく失恋したんだってことは十分わかってる。
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