浮気者上司!?に溺愛されてます
だから、ときめかなくて当然なんだけど……。


「……? 水野、どうかした?」


箸を持ったままぼんやりする私に、高津は不思議そうな目を向けてそう訊ねてきた。
それに、私はただ首を振る。


「……ううん、なんでもない」


そう言って、左手で茶碗を持った。


さっき恭介に手を握られた時は、言いようもなくドキドキした。
って言うか、あれは恭介がそういう魂胆だとわかっていたし、あんなオフィスで意図的に……と思えばそれが当たり前。
そうは思っても、思い出すだけで恭介の手の温もりを思い出してしまって、なんとなく頬が熱くなる。


「……やっぱ、なんかあったんだろ~、水野」


気がつくと、真正面で高津がニヤニヤと私を見つめていた。
からかうような目が居心地悪くて、私は慌てて顔を背ける。


「男絡み? なんなら俺、協力するぞお?」


しかもそんな意地悪なことまで言ってのける高津を無視して、私は頭の中から恭介を必死に追い出しながら箸を動かし始めた。
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