浮気者上司!?に溺愛されてます
ランチから戻った後、襲ってくる眠気を誤魔化したくて、私は書庫に籠ってため込んでしまったファイリングを始めた。


書類の左端にパンチで穴を空けて、ただ機械的に綴り込んでいくだけの作業。
それでも立ったまま手を動かして、目をファイルの背表紙に走らせる……という動作があるだけで、デスクでパソコンに向き合っているよりは眠気も紛れる。


そうして、頭の中ではぼんやりと高津に言われたことを考えていた。


『女っぽくなった』


すぐに別の言葉で否定されたけれど、普通に考えて嬉しい言葉には違いない。
そして、誤魔化しはしても、私の変化が全部恭介のせいだということは否定できない。


思わず、自分の右手を左手で握りしめた。
そして、なんとなく胸の高さに持ち上げる。


「あんなことされたら……私じゃなくたってドキドキするでしょ」


誰もいないのをいいことに、ふて腐れた気分になってそんなことを呟いた。


オフィスではいつもと変わらない緩~い上司。
私だけじゃない、他の同僚が提出した書類も、目くらばんを押す。
デスクに頬杖をついて、特に表情も変えず、口癖は相変わらず『いいんじゃん? それで。やってみて』


それでも、関心がないわけじゃない。
困っている部下には意外に切れ味鋭い提言を放つし、『いいんじゃん? それで』の後は副部長にも部長にも一緒になって押し通してくれる。
それがうまくいってしまうんだから、上は文句を言わない。
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