浮気者上司!?に溺愛されてます
適当で、いい加減そうでいて、本当は出来るだけ部下の思うように伸び伸びと仕事をさせている。
そんな空気が感じられて、任された部下も発奮する。
肩肘張らず適度に息を抜いて……そんな空気が、恭介が来てからうちのオフィスには浸透している。


生真面目過ぎる課長補佐の羽村さんには目くじら立てて文句を言われるけれど、うちの課員はみんな恭介に心酔しているかのように生き生きと仕事をしている。
そして、それは私も同じだ。


「……ドキドキして、当たり前じゃない」


だけど、それじゃいけないんだ。
甘えて弱気になりそうな自分を叱咤するように、一度両手でパシッと頬を叩いた。


そうして地味なファイリング仕事に集中しようとした時、ピピッと電子音が聞こえて、書庫の電子ロックが解除された。
ドアが開いて、恭介が入ってくる。
その姿を目にして、一度大きく心臓を騒がせながら、私は顔を背けた。


「お疲れ」


私をチラッと見やって、当たり前の挨拶を繰り出す。


「……お疲れ様です」


そんな恭介に短く返事をして、私はただ手を動かした。
恭介は私の横に立って、頭上の棚に目を走らせている。
早く出て行ってほしくて、私は目線を落としたまま、


「何を探してるんですか」


手伝うつもりでそう言った。
恭介から返ってくるファイルの名前を聞いて、同じように目を頭上に向けてから可動書庫を動かした。
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