浮気者上司!?に溺愛されてます
そんな私をあざ笑うかのように、ドアは激しく叩かれている。
このまま打ち破られてしまうんじゃないかと不安で怖くて、涙が零れてくる。


「止めて、警察呼ぶわよっ!!」


ありったけの勇気を振り絞ってそう叫ぶと、ドンドンという音の合間に、声が聞こえた。


「奏美っ!!」


……え?


「開けろ、奏美! 俺だ!!」


一瞬、なんのことやらわからずに、私はただ、呆けたようにドアを見つめた。


「奏美!」


張り裂けんばかりに叫ぶ声。
それはどう意識をたどっても、確かに恭介のものでしかなくて。


……なんで?
意味がわからず混乱しかけて呟きながら、ハッと思い出した。


合コンの夜も、恭介は私を見張ってたんだ。
まるでストーカーのように追いかけて来たんだ。


そう思い出した途端、パアッと視界が開けたような気がした。


なんなのっ……!
こんなにこんなに怖かったのに、その不審者の正体が恭介だなんて。


それでも『不審者』ではないことにホッとして涙が止まると、次の瞬間私の心にフツフツと湧き上がってきたのは、苛立ち交じりの怒りだった。


「奏美!」

「なんなのよっ!!」


怒りに任せてなんとか立ち上がると、思いっきり勢いよくドアを開けた。
そのまま、ドアの前にいる恭介にぶつかってしまえばいいと、本気で思っていたのに。


「大丈夫かっ!? 奏美っ」


こっちが驚くほどの俊敏さでヒラリとドアを避けると、まるで押し入り強盗のように玄関に入り込んでくる恭介に、私はただあ然とした。
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