浮気者上司!?に溺愛されてます
年齢的にも上司というよりは先輩に近い。
それ故、下っ端社員の視点から見てくれるし、自身の経歴から生まれる自信を持っているから、上司にも媚びずに怯まずに正論をぶつけて議論できる。
そんなアグレッシブな一面を上は買うし、型に捉われない緩さは下から慕われる。


その上……。桜庭課長は、思わず見惚れてしまうほどの超イケメンなのだ。


百八十近い身長とスーツの似合うスラッとした体型で、いつも気品を感じるくらい姿勢がいい。
涼し気で切れ長の瞳に、どこか色気の漂うちょっと薄い唇。
サラッと癖のない黒髪。


職場での緩さを知らずに、バーかなんかで出会ってしまった日には、多分普通の感覚の女ならば即お持ち帰りされる。
そういう意味で、結婚に焦るアラサーはもちろん、『イケナイ恋』を夢見るチャレンジャーな二十代前半の女子社員から絶大な人気を誇る。


そんな桜庭課長とエレベーターで二人きり。
ただでさえ妙な緊張をする。
しかも私の方は誰にも聞かれたくない醜い本音を思いっきり聞かれた(らしい?)状況。
なんとか言い繕わなければ、と、気持ちは無駄に焦るばかり。


早く地上に着け!と願ってしまう。
なのに階数表示はさっきから全く変わらず……と言うか、今になってやっと気づいたけれど、さっきからこのエレベーター、微動だにしていない!


「あ、あのっ……!」


慌ててよく見てみたら、さっきまで灯っていた行先階数のボタンのランプが消えている。
商業フロアのエレベーターは、同じボタンを二度押すと消すことが出来ることを今になって思い出した。
もちろん私は何の操作もしていない。だからこれは、桜庭課長の仕業に違いない。
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