浮気者上司!?に溺愛されてます
少しだけ恭介の頭を持ち上げて濡れたタオルをそっと当てると、ん、と短い唸り声が返ってきた。


「恭介！」


恭介の反応に心の底からホッとして、思わず叫びそうになりながら呼びかけた。
私が息を詰めて見守る中、眉間に皺を寄せてから、恭介がゆっくり目を開けた。
恭介は一度瞳を瞬かせて、そしてギョッとしたように目を見開く。


「うわ、奏美っ……！？　何泣いてんだ！？……って、そっか、思い出した……」


記憶を呼び起こすようにギュッと目を閉じて頭に手をやった後、恭介はグッと顔をしかめた。


「あ～……？ なんかすっげー頭痛え……」

「動いちゃダメ！ 恭介、頭打ってるの」


無意識に起き上がろうとする恭介を、私は慌ててそう言って止めた。
恭介が、変わらない角度で私を見上げたまま、キョトンと目を丸くした。


「あ～、そっか。俺、超狂暴化した奏美に襲われたんだった……」


目を閉じてしみじみと呟く恭介に、私はほんと、謝る言葉も見つからない。


「う……ほんと、ごめんなさい……。私、あんなに取り乱しちゃって……」

「あ、こんなとこにたんこぶ出来てるし」

「ご、ごめんなさい！」


背筋を伸ばして必死に謝ると、恭介はフッと緩く微笑んだ。


「嘘嘘。俺こそ悪かった。泣かせるくらい怖かったんだよな？」


優しく言われて、思わず言葉に詰まった。
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