浮気者上司!?に溺愛されてます
「冷やしてくれてサンキュ」と小さな声を漏らして笑うと、恭介はゆっくり目を開けて私をジッと見つめた。


「それに……まあ、殴られ得した感じ? まさか奏美が膝枕してくれるとはね……」


そんな言葉でからかいながら、ニヤッと意地悪に口元を歪ませる恭介に、私の頬はカアッと赤くなってしまった。


「だ、だって! 頭打ってる時は、下手に動かしちゃいけないって言うからっ!」

「そうそう。あ~、気持ちいい。至福の時って、こういうこと言うんだろうな」

「ば、バカッ」


私だって、こんなのどうしようと思ったけど。
私のせいだし、もしほんとに打ち所が悪かったりしたら、って、心配だったからっ!


「……サンキュ、奏美」


真っ赤な顔を隠すように背ける私に、恭介はそう言ってそっと手を伸ばした。
恭介の右手が私の頬に触れて、そんな仕草に鼓動が騒ぎ始める。


「……き、気分悪いとかない? 吐き気とか眩暈とか……」


自分の鼓動から気を逸らそうと、恭介の気分を確かめる。


「大丈夫。……気持ちいいって言ったろ」


そう言って目を細める恭介に、私の方はグッと黙り込んだ。


手を振り払うことも、膝を引いて立ち上がることも出来たのに。
私はただ、膝の上から私を見上げる恭介の瞳から逃げられなかった。


優しく頬を撫でる恭介の手が、私の心の中を探っているのがわかる。
それなのに凍り付いたように動けず、私たちはお互いの行動を待つようにジッと息をひそませていた。
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