浮気者上司!?に溺愛されてます
「もしいれば、警察呼ぶって脅して蹴散らせるだろ」

「でも……」

「大丈夫だって。俺がいるんだから」


そんな頼れる言葉を惜しみなく吐いてから、恭介はそっとカーテンを開けて、真下の暗いアスファルトを見下ろした。
私から見える恭介の表情にそれほど変化はない。
その目に何が映ってるかとても気になるけど、私は怖くて窓にも近寄れない。


「だ、誰かいた?」


怖々と訊ねると、恭介はゆっくり首を横に振った。


「いや……誰も。諦めたかな?」


そう言いながらも、恭介はまだジッと通りに目を凝らしている。
息をひそめて恭介の次の言葉を待つ私には、焦れるくらいの沈黙が過った。


ようやく恭介がカーテンをしっかり閉めたのを見て、私はその場にペタンと座り込んだ。
そんな私に歩み寄る恭介の爪先を見つめながら、警察、とボソッと呟いた。


「……警察に、相談した方がいいよね……?」


不安に駆られながらそう呟いて、『うん』という返事を求めて恭介を見上げた。
だけど、恭介は一瞬唇に指を当てて逡巡した後、いや、と短い返事をした。


「ど、どうして……?」

「残念ながら実害はないし、昨日と今日の二回だけだろ? しかも、それがどういう人物か、奏美の他に証言出来るヤツもいない。こんな状況で警察に駆け込んでも、相手にしてもらえない」

「そ、そんなっ……!」
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