浮気者上司!?に溺愛されてます
やけに理性的な恭介の言葉に、私は焦って声を上げた。


確かに恭介の言う通りだと思う。
あのストーカーの存在を証言出来るのは、ももちゃんしかいない。
恭介はその姿を見ていないのだから、そんな冷静なことを言うのも仕方ないのかもしれないけど……。


私は、しゃがみ込んだままブルッと身体を震わせて、自分を抱きしめるように身体を縮めた。


もしかしたら明日も、その次も、こんなことが起きるかもしれないのに……。
こんな怖い思いを繰り返すのかと思うと、不安で堪らなくて泣きたくなる。
なのに、恭介の言う通り今はどうすることも出来ないなんて……私、どうしたらいいんだろう。


俯いて、ただ肩を震わせた。
それでもなんとか落ち着こうとする。


少なくとも、今夜はもう大丈夫だ。
外にはもう誰もいない。
私はちゃんと自分の部屋に戻って来れた。
だから……。


「……奏美。しばらく俺んとこ来るか?」


そんな言葉を耳にして、私は一瞬目を瞬かせた。
バッと大きく顔を上げて、私の目の前にしゃがんで片膝をつく恭介をまじまじと見つめた。


「今は警察に通報も出来ないけど。でも、怖いんだろ? 明日からも仕事で帰りは夜になるのに。一人になるの」

「そ、それは……」

「だから、しばらくの間でも、俺が一緒にいようか?って提案なんだけど」

「そ、そんなの無理っ……!」


恭介の提案はとても心に温まるし、ついグラッと揺れてしまうくらい、今の私には心強かったのだけれど。
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