浮気者上司!?に溺愛されてます
「帰り送り届けてから、お前が眠るまで見張っててやる。出来れば朝も……って言いたいけど、まあ、朝はそれほど心配しなくて大丈夫だろ」


大きく見開く私の瞳に映る恭介は、自分の提案に本気で満足しているかのように、うんうんと大きく頷いた。


「ちょっ……そんなのダメっ!」


一気に理性を取り戻した私は、大きく首を横に振ってそう叫んだ。


「なんで」

「なんで、って……! そんなのダメだよ。だ、だって恭介にだって仕事も生活もあるんだから、私の心配なんかさせるわけには……!」


すごくまともなことを言ってるつもりなのに、恭介は眉間に皺を寄せて首を傾げる。


あああ……。
どうしてこの人には、私にとって当たり前の常識が通じないんだろう!


「好きな女が怖い思いしてるのに、放っておけるほど俺は薄情な男じゃないんだよ」


それなのに……そんなことをシレッと当たり前のように言うから、私の胸はキュンと鳴って、何が常識でどこからが非常識なのかすらわからなくなってしまう。


だって……嬉しい。
本当はすごく怖くて堪らないんだから、こんなこと言われたら泣きたいくらい嬉しい。
そんなの、当たり前じゃない……。


言いたいことは色々あるのに、私は今、自分にとって最高の我儘を受け入れて、ただ黙るという選択をした。
そして、恭介はそんな私をクスッと笑って、大きな手で頭を撫でてくれる。


「大丈夫。俺が守ってやるから」


こんな嬉しい言葉に抗える女がいるのなら、紹介してほしい……と本気で思った。
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