浮気者上司!?に溺愛されてます
予想通りの突っ込みでも、さすがに私もビクッと身体を強張らせた。
高津は顔を上げられずに、青い顔して唇を噛んでいた。


その様子だけで、高津の返事は伝わってしまった。
羽村さんは完全に目を怒らせて、レジュメを乱暴にテーブルに放り投げると、ハアッと大きな溜め息をついた。


「あなた、入社何年目だったかしら? もう一度新人研修からやり直したらどう?」


あまりに声を張り上げるから、羽村さんの剣幕に、フリースペースの他のテーブルからもチラチラと視線を感じる。


そりゃ、羽村さんの叱責はごもっともなんだけど、こんな晒し首みたいなやり方、酷すぎる。


「あ、あの……羽村さん」


堪り兼ねて口を挟んだ私に、羽村さんが眉をひそめた。


「お叱りはごもっともだと思うんですけど……。打つ手が無くなってしまって、高津も課長と羽村さんに相談しようと……」


高津に助け舟を出したつもりではなかったけど、どうやら同期の私の進言が羽村さんをますます不機嫌にしてしまったみたいだ。


「あなたたちね……。同期同士で内緒で打ち合わせする前に、上司に報告するのが先でしょう!?」

「はっ、すみませんっ!」


火に油……な状況に、私もビシッと背筋を伸ばした。
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