浮気者上司!?に溺愛されてます
毎日普通に私より忙しく仕事をして、帰りは私に合わせて、夜更けまで座り込み。
自分の家に戻るのは、多分日付が変わってから。
そしてようやく自分のプライベートタイムに入る。
そんなことを続けていたら当然寝不足にもなるし……恭介の奥さんが不審がるに決まってる。


そりゃ、私個人的にはすごく心強い。
恭介のおかげであれから変に付け狙われることも、怖い思いをすることもなく、一応平和に過ごせている。
本当に……こんな風に守ってもらえるなんて、ほんと言うと、涙が出るくらい嬉しい。
だけど……。


「こんなこと、いつまでも続けるわけにいかないじゃない……」


私は自分に言い聞かせるように呟いて、一度大きく息を吐いた。


恭介がこんな行動をとるのは、あの夜私があんなに怖がったから。
それなら、私が胸を張って『もう大丈夫だから』って一言言えば、それで済む。
きっと、恭介も普通の生活に戻ってくれる。


だから……。
最後に、一度だけ。


私は一度大きく深呼吸してから、思い切ってドアを開けた。
思った通り、一度何かに軽くぶつかって、そのわずかな隙間から恭介の声が聞こえてくる。


「奏美?」


顔だけ外に出して目線を下げると、ドアの前でお行儀よく体育座りをしていた恭介が、私を振り仰いでいた。


「どっか出かける?」


そう聞きながら立ち上がってスーツの埃を手で払う恭介に……。


「……入って」


目を伏せたまま、そう呟いた。
え?と短い声が返ってくる。


「中、入って。……こんなことしてて、誰かに通報されちゃったりしたら、ほんと、困るから」


早口でそう言って、私は恭介の腕をグッと掴んで、そのまま中に引きずるように誘い入れて、バタンと音を立ててドアを閉めた。
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