浮気者上司!?に溺愛されてます
炬燵テーブルの前にちょこんと座って、恭介が遠慮なく私の部屋を見回しているのがわかる。
部屋の様子から私という人間を見透かされてしまうような気がして、とても落ち着かない。
それでもそんな心中を気取られないように、私は湯気の立つ食器をトレーで部屋の中に運んだ。


「どうぞ。味の保証は出来ませんけど」


テーブルの横に膝をついて、緊張を隠しながら言った言葉はやけによそよそしくてちょっとぶっきら棒になった。
それでも恭介は次々とテーブルに並ぶ料理を見て、ヒュ~と軽く口笛を吹いた。


「意外。メシご馳走してくれるって、せいぜい茹でたパスタにあっためたミートソースとか出てくると思った」


ああ、完全に見抜かれてる。


実際のところ、普段一人の夕食はそんなもんだ。
それが今、私が恭介に振る舞っているのは、白身魚のホイル焼きにほうれん草のお浸し、あったかい豚汁に白いご飯……なんて。
仕事から帰ってきた後でも、いくらか手際よく準備出来て、男の胃袋を掴む鉄板の和食。
見栄張って気合い入り過ぎだ、と自分でも思う。


「か、勝手に料理しない人とか思わないんで欲しいんだけど。私、これでも……」


照れ隠しもあって、わざと可愛くない言い方をしてしまう私に、恭介はふふっと小さく笑った。
そして。


「結構家庭的なとこあるんだ」


狙い通りの言葉を期待通りの表情で言わせることが出来て、満足してしまう自分に慌てた。
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