セントポーリア
「これ、落としました?」
その綺麗な声をもっと聴きたくなってしまった。
俊哉にすごく似てる…
こんなに誰かに似ている人に出会ったことがない。
顔が似てるだけの他人なのに、すごく切なくなって胸が苦しくなる。
だめだ、冷静になれ私……
「ねぇ、聞いてる?」
「あっ…」
「急いでるんだよね」
完全にボーッとしてた。
男の人は機嫌が悪そうだ。
「これ、落とした?」
そう言って、男は私にハンカチを見せてきた。
私のだ、さっき落としちゃったんだ…。
私がコクリと頷くと、彼は私にハンカチを渡した。
「ボーッとしてちゃ危ないよ?気をつけな」
そう言って、彼は去っていった。
俊哉じゃない、分かってる。
あの人にも失礼だよね。
なのに、
ごめんなさい、どうしても涙が出てくる。