麗雪神話~理の鍵人~
セレイアたち三人は、さっきからずっと無言だった。

ぱちぱちとたき火のはぜる音だけが、静かな洞窟に響いている。

…気まずい。

―当たり前だ。

沈黙に耐えかねたのか、ポックがおずおずと提案した。

「セレイア、そろそろ眠ったらどうだ?
こいつが悪さしないよう、おいらが見張ってるからさ」

それを聞いて、ヴェインがぽつりとつぶやく。

「ふ……見張って何になる? 君、そんな小さな体じゃ戦えはしないだろうに」

「小さいって言うな!
いいか、何かしようとしてみろ、お尻にかじりついてやるから!」

「…それは怖いナイトだことで」

―どうもこの二人、折り合いが悪いらしい。これも当たり前だが。

セレイアは頭痛を感じながらも、ポックの提案を受け入れることにした。

「私はもう寝るわ。
ヴェイン、あなたも早く寝ないと、傷に障るわよ」

ヴェインのために、ポックがもうひとつテントを出してくれたので、そちらを指し示す。ヴェインの傷の手当はセレイアがしたが、どれも深いものばかりだった。少しでも長く眠って体力を回復させるべきだろう。
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