麗雪神話~理の鍵人~
数秒、固まるヴェイン。
それから、は、と細い息を吐き出して嘲るように笑った。
「ばかな。君、何を考えているわけ」
「あなたに私の考えをすべて教える必要はないわ。とりあえず手当をしながら行くわよ。そんなに殺されたいなら、理の塔についてから、たっぷり時間をかけて殺してあげるわ。覚悟なさい」
ちょっと悪そうににたりと笑って見せる。
そうした方が、ヴェインが素直に自分たちを頼れるのではないかと思ったからだ。
(…って、そこまで気を遣うって、どんだけ甘いのよ、私)
甘くてもなんでも、敵でもなんでも、目の前で消えていく命を放ってはおけない。それだけは譲れない。目の前で失われた、大切な命のためにも…。
ヴェインはまだ納得がいっていないようだった。
「僕が隙をついて君を殺すと、思わないの?」
―当然の質問だと思う。
「今のあなたにやられるほど、私は鈍っちゃいないわ」
「理の塔は僕の目的地でもあるんだよ? そんなところに敵の僕を連れていくなんて……仲間を裏切る気?」
「裏切るなんてことにならないわ。目的地に着いてから叩きのめしても間に合うもの」
問答は無意味と悟ったのか、ヴェインは力なく笑った。
「…ふん、好きにすれば。恩だとか、そんなもの、僕は感じないからね」
かくして今限りの協定が定まり、今限りの仲間が誕生したのだった。
それから、は、と細い息を吐き出して嘲るように笑った。
「ばかな。君、何を考えているわけ」
「あなたに私の考えをすべて教える必要はないわ。とりあえず手当をしながら行くわよ。そんなに殺されたいなら、理の塔についてから、たっぷり時間をかけて殺してあげるわ。覚悟なさい」
ちょっと悪そうににたりと笑って見せる。
そうした方が、ヴェインが素直に自分たちを頼れるのではないかと思ったからだ。
(…って、そこまで気を遣うって、どんだけ甘いのよ、私)
甘くてもなんでも、敵でもなんでも、目の前で消えていく命を放ってはおけない。それだけは譲れない。目の前で失われた、大切な命のためにも…。
ヴェインはまだ納得がいっていないようだった。
「僕が隙をついて君を殺すと、思わないの?」
―当然の質問だと思う。
「今のあなたにやられるほど、私は鈍っちゃいないわ」
「理の塔は僕の目的地でもあるんだよ? そんなところに敵の僕を連れていくなんて……仲間を裏切る気?」
「裏切るなんてことにならないわ。目的地に着いてから叩きのめしても間に合うもの」
問答は無意味と悟ったのか、ヴェインは力なく笑った。
「…ふん、好きにすれば。恩だとか、そんなもの、僕は感じないからね」
かくして今限りの協定が定まり、今限りの仲間が誕生したのだった。