麗雪神話~理の鍵人~
急峻な崖の道を、ロープを使いながら一歩一歩登っていく。

けが人のヴェインはその一歩一歩が苦しそうだった。

太陽が中天に昇る頃になるとなおさらだ。日差しが彼の体力を奪っていくのだろう。

たびたび足を踏み外しかけるヴェインに、そのたびセレイアは手を差し伸べる。

けれどヴェインは決してその手を取ろうとはしない。

意地になっているのか、どんなに時間がかかっても、自力で登ろうとする。

険しい道がひと段落し、歩くのが少し楽になった頃、セレイアはヴェインに訊ねた。

「ねえ、あなたはなんで、こんなことをしようとするの?」

「…こんなことって?」

「ディセルをつけ狙ったり、皇帝をたきつけて天上界をつけ狙ったり。あなたに何の得もあるとは思えないんだけれど」

単なる恨みや、征服欲で動いているようにはどうしても見えないのだ。

もっと大きな理由があるような気がする。
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