麗雪神話~理の鍵人~
塔に一歩足を踏み入れた瞬間、ぐらりと視界が揺れたような気がした。

地面が揺れたのか、脳が揺れたのか…。

酒に酔ったように、足元がおぼつかなくなる感覚がある。

セレイアはぐっと足に力を入れて、顔をあげた。

目の前はだいぶ開けていた。

広い、広間のようになっているようだ。

がらんとして、何もない。太陽の光も差し込まず、真っ暗な中に、まるで星々のまたたきのように銀色に光る床が、浮かび上がって見える。

天井は暗闇に包まれ、見通すことができなかった。

異質な空気をびりびりと感じた。

わかる―ここは、人が足を踏み入れていい場所じゃない。
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