麗雪神話~理の鍵人~
セレイアが思わずそう呟くのも無理はない。

手のひらサイズの小さな体に、背中に薄い羽を持ち、空を飛ぶ。

今まさに目の前にしているそんな生物を、「妖精」と呼ぶことくらい、誰でも知っている。

目の前の妖精は、虹色に輝く不思議な色の髪と瞳が印象的な、かわいらしい少年の姿をしていた。

彼は、「妖精」と呼ばれて少し気分を害したようだ。

「おいらは妖精なんかじゃないやい!
天上界にいるんだから、れっきとした、神様だ! …と思う。多分…」

語尾は消え入りそうだ。

何か思うところがあるらしい。

「ああ、ごめんなさい。神様なのね。
ええっと、けがはない? 大丈夫だった?」

セレイアがそう訊ねると、彼は意外そうな顔をした。

「あんた、こいつらと同じ人間だろ?
おいらのこと、どうして助けてくれたんだ?」

「どうしても何も……」

セレイアは少しかがんで彼に目線を合わせると、ふわっと微笑んだ。

「襲われている人がいたら、助けるのは当たり前よ」

その笑顔に、彼はびっくりといったかんじで目を見開き、それからさっと頬を染めてそっぽを向いた。
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