麗雪神話~理の鍵人~
命が流れていくその時。

レコンダムはふっと自身の人生を思い返していた。

貴族の子息として生まれ、何不自由なく暮らし、すすめられるままに政治家となり、思ったように、やりたい放題やってきた。

けれど、彼は孤独だった。

周りには嘘の笑顔で塗り固められた存在しかいなかった。

友と呼べる存在など、できたことがなかった。

富と栄誉だけがすべてだった。

けれど、思い返す。

友を得ようと思えば得ることができたことを。

只一人だけ、自分におべっかを使わない人物がいたことを。

政治家仲間のグレフという男。

なんの計算もない笑顔で、友達にならないかと、手を差し伸べてくれた男。

(友を、得ようと思えば、得られたのに)

その手を振り払ったのは、自分だった。

富と栄誉を追いかけるあまりに、自分は大事なものを置き去りにしてしまったのだろうか。

大事なものを犠牲にして、つかめたものなど、本当にあったのか。

そんな楽しみに、意味などあったのか。

(今となっては、わからんな――――)
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