麗雪神話~理の鍵人~
ボリスは渾身の力を込めて、剣を引き抜いた。

ほとばしる鮮血。

傾いたレコンダムの体はそのまま―――――

塔の外へと飛び出していく。

その瞬間。

レコンダムが、笑ったように見えた。

どうしてか、幸せそうな笑みだった。

それが彼の最期だった。




「終わった…………」

呆然と、ボリスはその場に立ち尽くした。

しかし今更のように腹の傷が痛み、立っていられなくなった。

思い切り、腹から剣を引き抜く。

大量に出血はしたが、内臓ははずれており、致命傷ではなかった。

(止血、止血……)

ボリスが自ら手当を始めようとした時、階段を駆け上がってくる足音が聞こえた。

「ボリス!!」

この声はシルフェだ。足音はひとつではないから、サラマスも一緒だろう。

出入り口の敵をすべて倒し、向かって来てくれたに違いない。

正直、ありがたかった。
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