麗雪神話~理の鍵人~
「シルフェ……」

思ったより掠れた弱々しい声が出た。やはりこの出血はまずい。

「ボリス!? ひどいけが!! レコンダムは!?」

シルフェの問いかけに、ボリスはにやりと笑って拳を突き上げて見せた。

それだけですべて伝わったらしく、シルフェは目を潤ませて笑った。

「今、手当をするから……」

サラマスが、きょろきょろとあたりを見回している。

「セレイアたちは?」

「…最上階に、行った……」

サラマスは最上階へ向かおうか迷っているようだったが、ボリスの手当の方を優先してくれたようだった。

「ポックがいろいろ持たせてくれたから……」

二人がかりで、傷口を水筒の水で洗い流し、薬草を貼って、さらし布で止血をする。

ボリスは朦朧とする意識の中で、シルフェの顔をじっと見つめていた。

そうしたら、たまらなくなった。

レコンダムを倒した今だからこそ、言いたいことがあった。

「……シルフェ」

「うん?」

そっとシルフェの華奢な手をとり、その目をまっすぐにみつめる。

「俺と一緒に、人間界に来てくれないか」
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