麗雪神話~理の鍵人~
セレイアは、時間を見つけてはポックの墓のそばに佇んでいることが多かった。

「セレイア、ここにいたんだね」

ディセルはここ数日たいへん忙しそうにしていて、なかなか会う時間がなかった。

だが久々に会えた嬉しさより、その表情にセレイアは驚いた。

なんて暗い顔をしているのだろう。

記憶を取り戻し、悲しみはありつつも前を向いて、意気揚々と仕事に励んでいるのではないかと、思っていたのに。

やはりポックの死が痛手となっているのだろうと、セレイアは思った。

「セレイア、君を連れて行きたいところがあるんだ」

ディセルに手を取られると、ほんのりと心が温かくなり、彼の表情のことは気にならなくなった。

彼の浮かべた笑みがひどく悲しげなことも、全部ポックのことが原因と思っていた。

(これからここで、私は生きていく)

ディセルのそばで。

(それってつまり…結婚するってこと!?)

そう思ったら、ぽんっとセレイアは真っ赤になった。

ディセルの顔が見られない。

(きゃーーーっ!!)

セレイアは、幸せだった。
< 157 / 159 >

この作品をシェア

pagetop