麗雪神話~理の鍵人~
セレイアは一瞬、拒絶されたのかと思った。

しかしそれは一瞬の勘違いだった。

ディセルはセレイアの腕を振りほどいた後、彼女に向き合い、思い切り彼女を抱きしめたのだ。

息もできぬほどに、力強い抱擁に、もともと逸っていたセレイアの胸がさらに早鐘を打つ。

「ディセル……?」

彼の腕のぬくもりは、ドキドキするのに、とても安心感があった。

「ああ…これは夢かな…ずっと前から好きだったセレイアが、俺を好きだって……セレイア、こんなに嬉しいことはない。ありがとう…」

感極まったような彼の声色に、セレイアはなんだかくすぐったくなった。

二人の想いが、やっと通じ合った瞬間だった。

けれど、無視できない事実が、二人の間には存在していた。

セレイアは一瞬それを言うことをためらったが、やはり言わなければならないと思った。

「でも、私は人間で、あなたは神よ。それは、変えられないから……」

―そう。二人が幸せに結ばれるには、この高い壁を越えなければならない。

セレイアの胸に不安がよぎる。けれどディセルはセレイアを抱きしめながら、簡単そうに言った。
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