麗雪神話~理の鍵人~
―そんなことを考えて、すぐにぶんぶんと頭を横に振った。

(今はそんなこと考えてる場合じゃない。レコンダムたちをなんとかしないと)

不意に遠くから、ゴォッと炎が燃え盛る音が聞こえてきた。

何気なくそちらに目をやったボリスは、目を丸くする。

箱馬車のような車が、こちらに走って来ていた。ただの車ではない。四つの車輪と人の乗る箱型の部分すべてが、燃え盛る炎に包まれながら、大地を猛進しているのだ。

「炎の…車…!?」

なんてでたらめな光景だ。

あんな車に生身の人間が乗ったら、ひとたまりもない。

ボリスの驚いた様子を見て、サラマスは不敵に笑いかけてきた。

「その通り、“火車”ってんだ。
中にはきっといつものメンツが乗ってるだろうな。
おお~い!!」

サラマスが手を振ると、火車は止まり、中からわらわらと数人の男女が出てきた。

驚くべきことに、全員やけど一つ負った様子はなく、無事だ。

「サラマス様!」

「サラマス様! お帰りなさいませ!」

「風の君もご一緒でしたか」

「みんな~! 久しぶりね!」

シルフェが人懐っこい笑顔を浮かべ、彼らをボリスに紹介してくれた。
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