麗雪神話~理の鍵人~
「ヴェイン! お前は何を企んでいる!
いったいどこで、理の領域のことを知ったの!?」

叫ぶように問いながら、ディセルが氷の力をヴェインに向けて集めているのがわかる。

ヴェインは余裕の笑みを崩さなかった。

「そうだなあ、貴様も良く知る人物から聞いたけど?」

それは予想だにしない答えだった。

集められた氷の力が霧散したから、ディセルにとってもそうだったのだろう。

「良く知る人物……?」

ディセルは呟き、思わず一瞬思惟に沈んだ様子だ。

セレイアも同じだった。

(まさか、誰かが裏切っているっていうこと?)

そんなこと、考えたくもない。

けらけらと、実に楽しそうにヴェインが笑った。

「いいねいいね、その表情!
そんな顔を見たいんだよ僕は。
もっともっと、疑心暗鬼になるといい! あっはっはっ!」

「ディセル! ヴェインの言うことを真に受けちゃだめよ!」

「…わかってる」

セレイアにそう答えながらも、ディセルは胸にとっかかりを覚えていた。
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