麗雪神話~理の鍵人~
蘇った記憶の中で、母を殺した人物。

それが誰かを思い出すことはできずにいたが、それがとても慕わしい人物だったことは覚えている。

まさか、密かにヴェインに協力しているのは、自分にとても近しい人物……?

―だめだ、思い出せない。

でも思い出さなければならない。

それまでは、ヴェインからできるだけの情報を引き出さなければ。

ディセルのまなざしが変わった。

それは隣にいたセレイアからも見て取れた。

混乱から、決意へ。

すっきりと一本道を見据えるような瞳。

「ヴェイン、お前は何を知っている?」

「貴様の知りたいことなら全部知っているかもね。
教える気はないけど?」

「なら教えたくさせるまでだ!!」

ディセルの怒声と共に、氷の刃が八方からヴェインを襲った。

ヴェインは霧をはらんだマントの一振りで、軽くその攻撃を払ってしまう。

「いやだね。
こう見えて僕は今、急いでるから。
そんなに戦いたいのなら、こいつらの相手でもしていてよ」

ヴェインが片手を振り上げると、急速にあたりに紫色の霧がわきでてきた。
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