麗雪神話~理の鍵人~
人間であるセレイアは、神々ほどにはここの異常さを感じられない。

けれど、ここからは神々の力を頼ることができないことを、神々の様子からいやというほど感じさせられた。

ふと顔をあげて、セレイアは息を呑んだ。

「みんな、見て!」

セレイアは思わず声を上げ、指差す。

その声につられて、皆がセレイアの指差した方向を振り仰いだ。

険しい茶色の山岳の向こうに、塔が見えたのだ。

それも、高い、高い塔。文字通り天を突いてそびえる石の塔だ。

距離的にはけっこう近く見えるがどうだろう。

それほど巨大な建造物だと言うだけかもしれない。

「あれが、理の塔なの? ポック。本当に、今まで見えなかった……」

「そうだよ。
あそこまではそんなに遠くはないけど、近くもない。
地道に山道を行かなきゃならないけど、みんな大丈夫?」

力を失った神々がどれだけの体力を持っているかは、未知数だ。

神々自身にもそれははかりしれないことだった。

けれどサラマスは、腕をまくって力こぶをつくってみせた。
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