麗雪神話~理の鍵人~
「セレイア、ゆっくりおいで」

「うん」

セレイアはロープをつかみ、言われた通り慎重に、崖を登っていく。

そして差し伸べられたディセルの手を掴んだ。

思いのほか強い力で、ディセルはぐっとセレイアの体を引き上げてくれた。

ディセルとセレイアは、握った手をはなさぬまま、そっと笑み交わす。

それは誰の目から見ても、アツアツというやつだった。

「シルフェ、俺様も先に行って手を貸してやる。ありがたく思え」

ボリスは尊大な口調とは裏腹に、優しい目でシルフェをみつめて言った。

シルフェはもうボリスの偉そうな態度には慣れっこだったので、「はいはい、よろしくね」と軽く受け流す。

ボリスの視線に含まれる想いに、サラマスはこの時はじめて気が付いた。

この男、シルフェのことが好きなのか、と。

そう思った瞬間、どういうわけかサラマスは少し動揺した。

別に、サラマスにはまったく関係のないことのはずだと言うのに。

―へえ~。まあ、いいんじゃねえの。

だが何か面白くないのは事実だった。
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