麗雪神話~理の鍵人~
「そんな辛い恋、しなくていい」

「……え?」

「そんな恋、するなと言ってるんだ」

シルフェのきょとんとした瞳が、夜空でもサラマスでもなく、ボリスを映している。

今シルフェはボリスだけを見ている。

そんな今だから言えることが、ある気がする。

(…言うんだ!)

「俺が、お前を、幸せにするから」

「…ボリス?」

シルフェは急に慌てだした。

きっとボリスの気持ちから逃げようというのだろう。

以前も、想いを告げようとした時、逃げられたことがあった。

(逃がさない)

身を起こそうとするシルフェの腕をつかみ、押しとどめる。

シルフェの情けない、泣きそうな顔。

―なんでそんな顔をするんだ。

この言葉を言ってしまったら、きっと自分はもう引き返せない。

わかっていても、ボリスはもう自分の気持ちを止められなかった。


「お前が好きだ、シルフェ」


決して逃げられないように、ボリスははっきりとした声音で告げた。
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